新生児糖尿病日誌

新生児糖尿病(+ ダウン症)の育児記録です。

検査・診断・治療については、必ず医師に相談してください。

新生児糖尿病と知的障害

唐突な話をすると。参照した資料的に、タイトルどうしようかなーと迷ったんですよね。永続型新生児糖尿病って1型糖尿病と同じようなもんだけど、一応は別の病気だよな…ってことは「ダウン症とインスリン依存状態」がいいのかなぁ。いや、そもそも問題に思ってるのはダウン症ではなく、それに起因する知的障害(精神遅滞)。その状態で、どうやってインスリンと血糖をコントロールするんだよ? って話なので「糖尿病と知的障害」かぁー? いやでも我らは新生児糖尿病なワケだから…2型はまぁ療養のアプローチが全く違うもんな…とか色々考えてました。

で、主題になりました。今回の内容は正確に書くと「インスリン依存状態と知的障害」かもしれません。

要はこういうハナシです

次男、インスリン・血糖管理ムリじゃね?

差別とか何でもなく、現実的にムリだろうなぁ…っつー話です。

計算自体は算数レベル…だが

インスリンの計算。健常者がやると、たぶんそんなに難しくはない。Minimed 770Gはボーラスウィザードもあるし、条件次第ではオートモード(ハイブリッドクローズドループ)などの高等な機能まで備えています。

でも、ダウン症で中等度知能障害の次男だとどうなるんだろう? ということで、特別支援高等学校の入試問題を見てみます。

国語 https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/68116/kokugo5m.pdf

数学 https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/68116/suugaku5m.pdf

ダウン症や中等度知能障害についていろいろ調べている限りでは、まずこの問題を全部解くこと自体が困難なのかなぁ、という印象があります。

んー…国語で服薬に関する読解問題がありますが、インスリンはもっと複雑なんですよね…。
んで数学、単位の問題も dL だけであって、皆さんおなじみの mg/dL はもうちょい高度なレベルになる。肉じゃが問題で比率は出ているけれども…ちょっと弱いか。グラフの読みも基礎の基礎でしかなく、トレンドの予測や一時停止などの判断ができるレベルではなさそう。やっぱキツいのか…?

糖尿病療養の専門書にも書いてない?

受験資格はないのですが、コイツを一通り読んでいます。

これ、乳幼児や学童期などのライフステージに応じた内容はありますが 知的障害 に関する項目はなかったと思う。つかそもそも 新生児糖尿病 ってワード自体が書かれてなかったような。どうすれば?

研究資料を読む

でも、インスリン依存のダウン症患者はきっと存在してるよな…どうしてるんだろう…? ということでネットをあさってみると…幸い資料が見つかった。ありがてぇありがてぇ…。

この研究はダウン症児が一型糖尿病を発症した事例です。(なので冒頭の通り記事タイトルに迷った)

1型糖尿病を合併したダウン症生徒に対する支援の実際(宇都宮大学共同教育学部教育実践紀要)2021/8/31

しかも結構新しい資料。感謝。長いので気になる方は読んでいただくとして、自分が気になった点をいくつかあげていきます。

0. まず大事なこと

冒頭部分ですね。引用させていただきます。

自己管理行動の獲得においては、知的発達水準だけが影響因なのではなく、本人を中心に置きながら学校と家庭、そして医療が同じ方向を向くことが不可欠であった。

この辺は先ほどの本、糖尿病療養指導とも通じる基本的な理念と思われます。また障害者であれば、福祉に関わる社会的資源との連携も超重要なファクターになります。まぁなんかそんなかんじでしょうか。

1. やっぱレアケースっぽい

読み始めると、さっそく 1型糖尿病に関しては通常学級しか研究対象になってないのではないかという話になります。まぁ、障害児は相対的に少ないですからね…。
んじゃ障害児の糖尿病はどうなんだというと、特別支援学校の医療的ケア全体のうち、血糖測定は1.2%、インスリン注射0.7% とぶっかまされます。さらにレアじゃねぇか…。看護師がいるから大丈夫とか、専用の施設だから対応可能だろう、というワケにはいかないかもしれませんね。

2. インスリンポンプやめるの!?

え、知的障害だからこそSAPの方が楽で安全じゃね!? と思ったのですが…

  • インスリンポンプのトラブル対処(衝突配慮・電池切れ警告・カニューレ外れるなど)
  • 水泳などで一時的に外して再装着するのが煩わしい
  • 着替えの時に大変
  • そもそもポンプが邪魔

確かにそうですよね…健常者だと多少の問題ですが、何らかの障害があるとかなり負担が増えるケースでしょう。そう思えば、知的だけではなく身体障害・精神障害・発達障害でもいろいろな困難が思い浮かびます… 親が健常者だと気づきにくい 点ですね。

また引用させてもらうと

時として周囲が本人のことを考えているつもりで、本人の意志が置き去りになることもある。本研究においては、本人の選択と自立を最大限に尊重し、家庭と学校がお互いの意図を共有しながら、支援にあたった。そのことが最もよく現れたのが、インスリンポンプからインスリン注射への移行である。

なるほど…ぐうの音も出ねぇ…。

※ ちなみにカニューレが外れた場合 カニューレを指し直す行為は医行為にあたる そうです。

3. 自己管理の獲得は可能?

身も蓋もない言い方をすると できる範囲は患者による健常者と同等レベルは困難 というふうに読めました。
本事例はダウン症かつ中等度知的障害者の中でも、比較的に1型糖尿病の自己管理に向いている特性の患者さんだったようです。それでも成人後では

  1. 血糖測定後の血糖値記載
  2. 注射器の目盛りの確認
  3. 試し打ちの確認
  4. 規定量のインスリンが注入されたかの確認

上記に関して支援が必要、という内容でした。やはり完全な自己管理は難しいでしょう。つか健常者でも指導が難しい場合も多いようですし、まぁそうでしょうねぇ…。ですが、臨床的に詳細な実証がされたこと・必要な支援や連携すべき資源が明確化されたことは特筆すべきことなのだろうなぁ、と当事者親としては思いました。

でもまぁ、やっぱ支援なしでは無理なのが現実か… という感想です。

糖尿病だけではなく、障害についても把握しておく

先ほど

知的だけではなく身体障害・精神障害・発達障害でもいろいろな困難が

と書きましたが、いまのところ参考にしてるのはこのあたりです。

radikoでも授業聴けるしホントありがてぇ…。やる気になれば母語で容易に専門知識が得られる環境はありがたいですね。

非常に難しい状況っぽいですが、ぼちぼちやっていこうと思いますー。